名古屋東洋官窯陶磁美術館について

コンセプト

名古屋東洋官窯陶磁美術館は、東洋が誇る陶磁のコレクションを、より多くの方々に知っていただくための私設美術館です。東洋の陶磁器の中には、世界的に評価の高い、傑作と呼ばれるものも多く、専門家やコレクターはもちろん、一般の方にも広く鑑賞していただき、その美しさや歴史的背景をお伝えすることで、より多面的、多角的な価値が生まれるものと考えています。 官窯陶磁器は、それぞれの時代の職人たちが、大胆な直感や美意識、地道な技術の積み重ねによって作り出したものその陶磁職人の魂とも言えるでしょう。国や民族ごとに異なる文化から生まれたそれらからは、その国のみならず、多民族の文化や歴史、言葉、芸術、ライフスタイルを垣間見ることができます。どれもが先見性・創造性・独創性に富み、何百年を経ても当時の人々が追い求めた美や世界観が伝わってきます。 これらを丁寧にひも解いていくと、陶磁器美術は、哲学や史学、考古学・民俗学、言語学を生み出したともいえるのではないでしょうか。文学や思想・宗教、芸術はもちろん、最近ではコミックスなどの新しいカルチャーに至るまで、幅広く浸透していることが分かります。豊かな知見と確かな成果をもとに作り上げた美術品から、時代を超え、あらゆる方面に影響を与えた先人たちのアイデンティティが見えてくるのです。 私たちは、そんな世界に誇る名品を、いつでも・何度でも間近で観られる、すべての人に開かれた美術館を目指します。

本館旧蔵 宋汝窯青磁について

中国清凉寺汝窯青磁北宋天青釉缠枝纹大盘
汝窯青磁とは
清朝の第6代皇帝である乾隆帝(在位1735~1796年)は、中国の伝統的な書画をこよなく愛し、現在も中国の国立故宮博物院に多くのコレクションを残しています。その乾隆帝が類稀な至宝であると称えたのが、北宋の汝窯(じょよう)です。 汝窯とは、中国・北宋(960~1127年)末期、おもに宮廷用の青磁を焼いた窯、またはその作品のことを指します。汝窯は、彫り模様のない灰白色の素地に、底裏にまでまんべんなく釉薬(うわぐすり)を使っているのが特徴です。

汝窯青磁とは

釉薬には、宝石の一種である希少なメノウ粉が混ぜられていました。多くは、釉面に氷裂文の貫入(かんにゅう)が表れていますが、なかには貫入がまったく無いものもあると言われています。貫入が無いということは、焼くときに胎土と釉薬が同じように収縮しなければならず、通常では不可能に近い技術とされています。 汝窯作品には、高台(こうだい)内側に多くの支釘跡が見られます。これは、宮廷御用品ということから、精密な寸法が求められていたためとされています。窯の温度調整が難しい淡い水色は、その美しさから「雨過天青(雨上がりの湿った空の色)」と表現されました。

汝窯青磁とは2

汝窯青磁を産んだ汝窯の稼働期間は、わずか20年足らずだったとされています。そのため、後に南宋時代に入った時には既に「近ごろ最も得がたし」と言われるほど珍重されていました。現在残っている作品は、当時宮廷向けに厳選されたもののみ。世界でも約90点程しか確認されておらず、その多くが北京の故宮博物院や台北の故宮博物院に所蔵されています。汝窯が作られていた北宋時代は、さまざまな陶磁器の魅力が花開いた時代であり、特に中国北部地域の耀州窯(ようしゅうよう)や定窯(ていよう)、磁州窯(じしゅうよう)などの生産地で、個性豊かな白磁や青磁が生み出されました。そんな時代に作られた陶磁器のなかでも、汝窯の美しさは群を抜いて評価されており、中国陶磁の最高峰とも、人類史上最高の焼き物とも呼ばれているのです。

光を照らす角度によって色度が異なる時の写真

汝窯青磁とは3

在光照下有不同角度出现不同色度的図片

中国語での解説

汝窑瓷器简介
中国清凉寺汝窑青瓷北宋天青釉缠枝纹大盘
口径34.5cm 低足16.8cm 高6.1cm 底部圈足内有9颗芝麻支钉。
日本名古屋東洋官窯陶磁美術館館藏。
该大盘器型端庄,情素淡雅。天青釉纯净柔和,温润如玉,色泽青翠华美,釉汁凝脂莹亮。正面底部有两道弦纹,口部又有两道弦纹,四道弦纹之间又有一圈缠枝纹,
疏朗清奇,朴素简练。大盘内外遍布细碎鱼籽纹开片,而冰裂纹贯穿其中,细密重叠,错落有致。由于时间久远,开片内浸色古旧自然,交互杂错却有参差有序。
大盘具备有以下三个特征:

  1. 器型巨大。汝窑瓷器到目前发现,全球各大博物馆以及私人收藏的仅有七八十件,大多在10〜20cm之间,甚至有人认为“汝窑无大器”,而此盘34.5cm,
    绝无仅有。中国河南省汝州清凉寺汝窑遗址发掘中,曾出现过大件残片以及匣钵,专家们推断汝窑曾烧造过大件瓷器。但是,能拼接而成的残器也未见三十
    多毫米的器物。而此件传世汝窑大盘实属罕见,价值非凡,它也有力的证实了北宋汝窑曾为宫廷烧造过大件器物。
  2. 制作精美。大盘不仅器形硕大,工艺精湛,制作精良,反映出北宋年间的工匠们烧造瓷器已达到相当纯熟的水平。此盘釉汁肥润,薄厚得当,通体天青釉,
    无任何瑕疵。从纹饰不难看出,此盘应为二次烧造,先将肽体制作刻划完成后初次入窑先素烧,挑选完美者施釉再次复烧。优中选优,唯供御拣。
  3. 保存完整。世间收藏的汝窑中,有一部分均已被上岁月的伤痕,磕磕碰碰,或剥或冲,这也在所难免。而此件大盘流传了近千年,经历沧桑,
    尽管故旧痕迹明显,却保存完整,无任何缺陷,除了几处棕眼浸坑而外,完整无损,实属幸运!

汝窑是宋代【五大名窑】之首,传世器物很少,在南宋时期就已“近尤难得”历代都被视为无尚珍品。名古屋東洋官窯陶磁美術館收藏的这件汝窑大盘传承有序, 首次向外公开,也为全球收藏界送出一份良飨。供专家学者以及同仁们研究品鉴。

Introduction of Characteristics of our Ru Kiln Porcelain

This is a description of a Northern Song Dynasty (AD 960-1127) porcelain artifact from the Ru Kiln, known as the "Ruware Celadon, Qingliang Temple in China, a large plate glazed with Northern Sang's Tianqing (sky-blue) glaze with twisted branches design" This dish measures 34.5cm in diameter, has a foot height of 16.8cm, and stands at 6.1cm tall. It features nine sesame-seed-like spur marks on its base. This particular artifact is housed in The Museum of Oriental official kiln ceramics in Nagoya, Japan.

本館旧蔵 宋汝窯青磁について

汝窯とは、北宋時代(紀元後960~1127年)に作られた窯およびその系統の窯から作られた青磁のことを指します。ごく短い期間の20年ほどしか生産されていないため、汝窯の作品はとても希少で世界でも100点にも満たないとされています。 名古屋東洋官窯陶磁美術館旧蔵の中国清凉寺汝窯青磁北宋天青釉缠枝纹大盘は直径34.5cm、見込み16.5cm、高さ6.1cmの大きさです。高台の内側にごまのような形をした9つの支釘跡があるのが特徴です。

The large dish displays a dignified and subtly graceful shape. The sky-blue glaze is pure and gentle, resembling the softness of jade, with a beautiful and vibrant bluish-green hue. The glaze is thick and lustrous, reminiscent of congealed fat. On the front base, there are two sets of parallel lines, and near the rim, two more sets of parallel lines. In between these, there is a twisted branch pattern, sparse, clear, and elegant. The dish is adorned with finely scattered fish-roe-like patterns, while crazing lines traverse through them, forming a fine and intricate network, creating a striking yet orderly appearance. Due to the passage of time, the colors within the crazing lines have aged naturally, resulting in a harmonious, contrasting pattern.

本作品は威厳のある、優美な形をしています。天青色の釉薬は混じりけがなく穏やかで翡翠の柔らかさを連想させ、美しく鮮やかな青みがかった緑の色合いが見て取れます。また失透性の釉薬は重厚で光沢があります。表面の見込みと口縁にはそれぞれ2本ずつ平行線が、その間には上品に枝の模様がまばらに描かれてあります。釉面に表れる氷裂文の貫入は繊細で複雑な網目状に広がっており、その整然さは目を見張るほどです。時が流れるにつれ氷裂文様の色合いも徐々に変化していき、色のコントラストを作り出しながらも調和のとれた模様になっています。

This large dish possesses three notable characteristics:

汝窯青磁北宋天青釉缠枝纹大盘には3つの特徴があります。

Grand Scale: Ru Kiln porcelain is renowned for its rarity, and most known pieces worldwide measure between 10 and 20cm in size. Some even claimed that "Ru Kiln wares lack large pieces." However, this dish, measuring 34.5cm, is a unique and unparalleled specimen. Excavations at the Ru Kiln site in Qingliang Temple, Ruzhou, Henan Province, have uncovered large pottery fragments and boxes, leading experts to conclude that Ru Kiln once produced large ceramics. Nonetheless, no intact pieces larger than 30mm have been found. This extant Ru Kiln large dish is exceptionally rare and valuable, conclusively proving that Ru Kiln in the Northern Song Dynasty did create large pottery for the imperial court.

1つには、その比類なき大きさです。汝窯はその希少さで知られており、世界で有名なものでも10~20cm程の大きさしかなく「大きな汝窯は存在しない」と考える人もいます。しかし本館旧蔵の大盘は34.5cmの直径を誇り、世界に二つと存在しない貴重な陶磁器となっています。中国河南省臨汝県清凉寺で大きな陶磁の欠片や箱が発掘されたため、専門家たちはかつて大きな汝窯が焼かれていたと結論づけましたが、30mmより大きくまた破損の無いものはまだ見つかっておりません。本館の汝窯は実に珍しく大変貴重で、北宋時代に宮廷御用磁器として大きい汝窯が焼かれていたことを証明するものとなっています。

Exquisite Craftsmanship: The large dish not only boasts a grand size but also exhibits exceptional craftsmanship, reflecting the high level of ceramic production during the Northern Song period. Its glaze is rich and well-balanced, with consistent thickness throughout and an impeccable sky-blue glaze without any defects. The decorative patterns indicate a two-step firing process: initial body carving followed by the first biscuit firing, and a second glaze firing after selecting the best pieces. Only the finest examples were chosen for imperial use.

2つには、精妙な職人技です。大盘の素晴らしさは大きさだけでなく、この精妙さは北宋時代の職人が陶磁器焼成において非常に熟練したレベルに達していたことを反映しています。天青色の釉薬はふっくらとしバランスが取れており、寸分の狂いもなく均一に作品を覆っています。装飾は始めの作品の形成とその後の素焼き、そして一番美しい作品選択後の釉掛といった2段階の焼成プロセスを示しています。優れた作品のみ宮廷御用磁器として選ばれるのです。

Exceptional Preservation: Many extant Ru Kiln pieces show signs of wear and tear from the passage of time, including chipping, cracking, and peeling. However, this dish has been passed down for nearly a thousand years, and despite showing clear signs of age, it remains completely intact, with only a few minor brownish glaze bubbles. Its pristine condition is indeed remarkable.

3つには、抜群の保存状態です。現存する汝窯の多くに欠けや割れ、釉はげなどの時間の経過による摩耗が見られます。しかし本館の汝窯は約1,000年もの時が経ち年季を感じさせつつも、小さな茶色い釉薬の気泡が数カ所にあるのみで、完全に無傷の状態で残っています。本来の形を保ったまま現存していることは、実に驚くべきことなのです。

Ru Kiln is the foremost among the "Five Great Kilns" of the Song Dynasty, and surviving artifacts are exceedingly rare. By the Southern Song period, they were already considered "extremely rare," and throughout history, they have been regarded as priceless treasures. The public exhibition of this Ru Kiln large dish, currently held in the Tokoname Toukou Kan Kiln and Ceramics Art Museum in Nagoya, provides a valuable opportunity for experts, scholars, and enthusiasts to study and appreciate this extraordinary piece.

汝窯は宋時代の五大名窯の中でも最高峰と称され、現存する作品は極めて珍しいと言われています。南宋時代以前でさえもすでに大変貴重なものと考えられており、値を付けられないほどの美術品だと言われてきました。汝窯青磁北宋天青釉缠枝纹大盘の公開展示は現在本館のみで行われており、専門家や学者、陶磁愛好家が作品を鑑賞する貴重な場所となっています。

磁器産業発達における官窯の役割について

官窯(かんよう)とは、「中国宮廷直属」の陶磁窯、もしくはそこで製陶された焼き物のことをいい、生産制度と新技術・新製品開発において革新を追求し
産業進歩へのリーダーシップ的な役割を担っていた陶磁窯です。

官窯の歴史

宋時代

長江の南、江西省東端、昌江の流域に焼き物の町ができ始め、宋時代景徳年間に、宮廷及び官府に献上するための陶磁器が生産されていました。
その元号から名前を取り、その地名を景徳鎮(けいとくちん)と呼ぶようになりました。この時代に貢がれていた御器※の多くは民窯(みんよう)※の製品でした。
※御器...皇帝に貢がれる磁器のこと
※民窯...民間経営の窯のこと。

元時代

1278年、政府の陶磁業管理機関が景徳鎮で設立されました。この機関は民窯に対する品質の確認、磁器の輸送等を使命としていました。

明時代

明時代初期(1369〜1426年)、景徳鎮の中心街にある珠山に官窯が設立され、生産が開始されました。官窯の設立目的は主として2つあります。
一つ目は、宮廷及び官府の高級日用磁器を製陶すること、二つ目は観賞用磁器を製陶することでした。

官窯の生産体制と技術革新

古代中国の宮廷及び朝廷の磁器需要は相当な規模であり、また品質要求が厳しかったため、官窯は新たな生産体制と技術・製品開発体制の革新が求められました。
このような要求に応えることで、景徳鎮の磁器産業の発達に貢献し、生産制度を樹立し、釉上彩絵技術※と釉下技術※を確立・精錬していきました。
※釉下技術:「下絵付」。素地と異色の土をはめ込んでから透明釉をかけて焼く「象嵌」。
 黒土に白い化粧土(色は一例)を塗ってから透明釉をかけて焼く「刷毛目」、酸化銅で加飾して透明釉をかけて還元焼成する(=赤く発色する)「釉裏紅(ゆうりこう)」など。
※釉上彩絵技術:主に「上絵付」のこと・五彩・粉彩(ふんさい)など。

生産制度について

大規模の生産に対応するため官窯は以下のような生産体制を築き上げました。

貫性の生産体制

官窯は原料の採掘から、泥料の加工及び精製、成型、絵付け、そして焼成までの全工程を構内で構えている。

生産規模の大きさ

官窯の生産規模は民窯よりはるかに大きい。民窯の平均規模は窯1~3基であり、大きい窯であっても5、6基であるのに対し、官窯の生産規模は20基ほどでした。
ピーク時には58基まで拡大されていて、規模の大きさが分かります。

官窯の組織づくり

官窯は大規模生産を要求されたため、大勢の労働力が必要でした。またその特別な政治的地位を生かし、民窯から最も優秀な工匠(こうしょう)を強制的に
役務させることができました。これが匠役制度と言われています。
各々の工程で分業が進められ、細かな工程ごとに職工(手作業に従事する人)が配置され黙々と仕事をこなしていました。
このように、官窯は分業体制と協業管理の先進的経営の先駆けと言えるのです。

美術館概要

施設名 名古屋東洋官窯陶磁美術館
運営会社 株式会社 富
運営責任者 富 つよし Tsuyoshi Tomi
住所 〒450-0002
愛知県名古屋市中村区名駅三丁目26番21号
TOMIビル5F
電話番号 052-541-2696
メールアドレス info@nagoya-ceramic-museum.com
サイトURL https://nagoya-ceramic-museum.com/
営業時間 9:00~17:00(入館16:30まで)
休館日 土日祝(但し、貸切・事前予約・特別開館日は開館)
※ 特別開館日に関しては新着情報をご確認ください。
※ 休館日に入館をご希望する方は必ず事前(3日前)にお電話にて
ご予約いただきますようお願いいたします。
※ 特別貸切のご予約がない時に限り予約を受け付けております。

アクセス

名古屋東洋官窯陶磁美術館

〒450-0002 愛知県名古屋市中村区名駅三丁目26番21号 TOMIビル5階
TEL:052-541-2696

営業時間:9:00~17:00 (入館16:30まで)
休館日:土日祝(但し、貸切・事前予約・特別開館日は開館)
※ 特別開館日に関しては新着情報をご確認ください。
※ 休館日に入館をご希望する方は必ず事前(3日前)にお電話にて
ご予約いただきますようお願いいたします。
※ 特別貸切のご予約がない時に限り予約を受け付けております。


[ アクセス ]
JR名古屋駅より徒歩3分、大名古屋ビルヂング裏。
地下鉄名古屋駅4番出口、「ユニモール」地下街2番出口よりすぐ。

名古屋東洋官窯陶磁美術館 外観

駐車場のご案内

TOMIビルタワーパーキング

一般料金 15分 300円

※ハイエース、アルファード、ハリアー等の規格サイズは場内にて
お預かりが可能ですので、常駐スタッフに御声掛けください。

[ お得な駐車場回数券について ]
1枚15分/300円 10枚 2,700円
1枚15分/300円 20枚 5,000円

[ 駐車場営業時間 ]
平日 8:00~20:00
土・祝日 9:00~20:00

名古屋東洋官窯陶磁美術館 駐車場